高い負荷量vsストレッチ
2022.09.21 更新
今回紹介する研究論文は
高ケイデンス サイクリングは、軽度から中等度のパーキンソン病患者の運動緩慢、硬直、可動性の持続的改善を促進します
High-Cadence Cycling Promotes Sustained Improvement in Bradykinesia, Rigidity, and Mobility in Individuals with Mild-Moderate Parkinson’s Disease
です!
元論文はこちら
↓↓
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30944720/
今回は
高ケイデンスサイクリングとストレッチの効果を比べた研究です。
高ケイデンスサイクリングとは、高回転(1分間に80回転)でサイクリングマシーンを漕ぐことです。
実際の対照群とその属性です。
高ケイデンスサイクリング群(N=8)(age:69.9±7.4、HY:1.4±0.52)
ダイナミックサイクリング40分間のセッション6回(5分ウォームアップ、30分サイクリング、5分クールダウン)
15日間、7セッション(6回この介入は、カスタマイズされたモーター付きの 50 回転/分 (rpm) の固定サイクルでの 5 分間のウォームアップ、30 分間の高ケイデンス サイクリング、および 50 rpm での 5 分間のクールダウンで構成されていました。30 分間の高ケイデンス サイクリングの間、モーター速度は 80 rpm に設定されました。)
ストレッチ群(N=8)(age70.0±6.4、HY:1.9±0.35)
5分ウォームアップ、35分上半身、下半身を座った状態でストレッチ。20秒保持。
です。介入期間は15日間でそのうち6セッションを行っています。
6セッションの前後で評価を取っています。
評価項目は
UPDRS-PartⅢ、Kinesia one、TUGで行われていました。
結果としてはまずはTUG(Timed uUp and Go Test)
(Angela L Ridgel,et,al,Parkinsons Dis. 2019 Mar 3;2019:4076862)
です。高ケイデンスサイクリング群は実施前後で約2秒程速くなっていますが、ストレッチ群は変わらずです。
次にkinesia oneで取られたデータです。このkinesia oneは海外で販売している製品でセンサーとアプリケーションを使用して動作緩慢やジスキネジアなど計測できるようです。
(Angela L Ridgel,et,al,Parkinsons Dis. 2019 Mar 3;2019:4076862)
手の動きの振幅、急速な交互運動速度、および歩行のキネシア スコアは、高ケイデンス ダイナミック サイクリング後に有意な改善を示しました。
最後にUPDRS-partⅢです。
(Angela L Ridgel,et,al,Parkinsons Dis. 2019 Mar 3;2019:4076862)
こちらも高ケイデンスサイクリング群で終了時には2ポイントほど改善が見られています。
高ケイデンスサイクリング群vsストレッチ群
では高ケイデンスサイクリング群が良い結果を示していました。
この研究は被験者が8名ずつと少し少ないことと、ストレッチが15日間の中で6日程度の頻度だったのを考えると、高ケイデンスサイクリング群の方が結果が良かったのは予想通りな気がします。
パーキンソン病は固縮があり、筋肉がより固まりやすいのでそういった点では、ストレッチの頻度はもう少し高めに設定をして、期間も伸ばしていくと歩行や動作緩慢にも効果が出るんじゃないかな?と思います。
ただ、高ケイデンスサイクリング群は15日間6回のセッションでも効果が出ていて、動作緩慢にも良い結果を示していました。
以前調べていた論文でも、高負荷トレーニング筋固縮を少し緩和出来る可能性がある。というのがありました。
今回の研究でも高ケイデンスサイクリング群はそのような結果を示していました。
ということで、私たちのパーキンソン病専門のリハビリジムでのパーソナルトレーニングの介入では
最初のうちはストレッチをしっかりとお伝えして習慣化してもらった後に、ステップ台を活用して高負荷のトレーニングをしたり、ウォーキングを工夫して負荷を高めたりします。
高負荷のトレーニングを取り入れている方は、やはり調子が良さそうです。
これらのことから、ある程度の負荷量は本当に大事だと考えています。
ウォーキングやステップ台以外にも自宅に自転車エルゴメータや簡易的なトレッドミルがあれば尚良いかなと思います。
最近は比較的安価でコンパクトなものが売られているのでおすすめです!
パーキンソン病を日々見ているセラピストの方やパーキンソン病の方が運動をする際にヒントになれば嬉しいです♫
「根治療法が確立されるまで動ける体つくり」を目指して!
PD Cafe
小川順也
PD Cafeとは?
2013年より開始したパーキンソン病の方の運動継続プログラムです。
パーキンソン病を専門とし、国家資格である理学療法士を保有したスタッフがパーキンソン病の方へ運動をお伝えしています。
PD Gym
パーキンソン病専門のリハビリジム。理学療法士や作業療法士等の国家資格保有者が、個別指導します。
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執筆者
小川順也
理学療法士/LSVT BIG認定療法士
2011年〜2015年 国立精神・神経医療研究センター病院勤務
2017年〜株式会社Smile Space代表取締役就任
2022年は
パーキンソン病・運動障害疾患コングレスのPDナース・メディカルスタッフ研修会にてパーキンソン病のリハビリテーションというテーマで医療従事者へ向け講演を実施。その他多数の講演にてパーキンソン病のリハビリテーションを啓発している。
著書:パーキンソン病と診断されたら最初に読む運動の本(日東書院)
共著:パーキンソン病の医学的リハビリテーション、神経難病100の叡智
投稿:百年人生におけるパーキンソン病治療の展望 第四刊 「診断早期からの運動継続プログラムで根治療法が確立されるまで動ける体作り」