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通常の理学療法は効果ない?

本日ご紹介する研究論文はこちら!

パーキンソン病の補助療法としての筋力トレーニング、有酸素トレーニング、および追加の理学療法の比較
:パイロット研究
Comparison of strength training, aerobic training, and additional physical therapy as supplementary treatments for Parkinson’s disease: pilot study

元論文
↓↓

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4293290/#b5-cia-10-183

今回の研究の実施期間は

 

2010年9月〜2012年9月の2年間で行われました。

 

対象は45~80歳のパーキンソン病と診断された方、ヤール重症度分類は1~3の方でした。

評価は
UPDRS、機能的能力(Senior Fitness Test)、EEG、10mwt、BBS(バランステスト)です。

 

介入頻度と期間は
週2回で12週間でした。

 

どういったグループで比べたかというと

筋力トレーニング群(ST)N=8:最大1回の繰り返しの80%大きな筋肉、器具を使用、最大8~12回繰り返す、セット間1分30秒の休息

有酸素トレーニング群(AT)N=5:最大心拍数の70%、30分間トレッドミル、5分間ウォーミング、5分間リカバリー、 VO2maxの60%、最大心拍数70%、12週間強度同じ

理学療法群N=9:上肢、下肢の体操、ストレッチ、歩行訓練で30~40分提案。過負荷はなし

 

の3つのグループで比較しています。

 

結果をグラフにまとめました。


※論文より執筆者がグラフ作成

UPDRS-partⅢは運動項目なんですが、筋力トレーニングと有酸素トレーニングは改善が見られましたが、理学療法群では改善が少しです。

次に10メートルどの程度の速さで歩いたかというテストです。

※論文より執筆者がグラフ作成

3群共改善が見られていますが、筋力トレーニングと有酸素トレーニングの方が改善具合が高いです。

 

最後にBBS(バランステスト)です。

※論文より執筆者がグラフ作成

こちらも筋力トレーニングと有酸素トレーニングは改善が見られているのに対して、理学療法群は変わらずでした。

バランステストの改善度合いは1~2スコアくらいなのでかなり変わったかと言われるとう〜んというところです。

 

ということでUPDRSと10mwtとBBSを比較してみると、筋力トレーニングと有酸素トレーニングの両群の改善具合が大きかったのに対して、従来の理学療法群はそこまで変化はありませんでした。

 

理学療法群でやられたことは、

・上肢/下肢の体操

・ストレッチ

・歩行訓練

で過負荷なトレーニングはなしという条件のもとでした。

 

なので、アプローチの手段を変えて行けば、従来の理学療法でも十分効果は出せると考えます。誤解がないように、理学療法が効果ないわけではないので安心してください。

 

この論文が言いたいのは、負荷量を気にして行こうよということだと私は解釈しています。

 

しかし、この論文で行われている理学療法は結構日本でやられているパーキンソン病に対する理学療法にも似ているんじゃないかな?と思っています。

 

もちろん、しっかりと負荷量を考えて行っている方々も多いですが、お話を聞いているとまだまだ負荷量を低く見積もって実施している施設が多いのではないかな?と感じています。

 

色々な研究論文を読んでいると最近では中等度以上の負荷の有酸素運動や筋力トレーニングを加えることが効果的という印象を思います。

 

PD Cafeの自費リハビリ施設であるPD Gymでのパーソナルトレーニングでは

 

一人一人のお身体の状態をしっかりと検査/評価して運動メニューや負荷量を考えています。

 

負荷量の調整は最初から一気に高くなってしまうと、逆に痛みが出てしまったり、代償動作といって間違った運動になっていたりということがあるので、段階的な負荷量の調整を行っています。

 

今回の研究論文で改めて運動の負荷量を検討することの意義を感じました。

パーキンソン病の方へのアプローチで悩んでいる方の参考になればと思います。と同時に、どんな運動をしたらいいのかな?と悩んでいるパーキンソン病の方の参考にもなればいいなと思います♫

研究論文って難しい内容ですが、紐解いていくととても有益な情報が載っていますので引き続きブログを通してみなさんに発信して行きます♫

 

「根治療法が確立されるまで動ける体つくり」を目指して

 

PD Cafe

小川順也

 


PD Cafeとは?

2013年より開始したパーキンソン病の方の運動継続プログラムです。

パーキンソン病を専門とし、国家資格である理学療法士を保有したスタッフがパーキンソン病の方へ運動をお伝えしています。

PD Gym
パーキンソン病専門のリハビリジム。理学療法士や作業療法士等の国家資格保有者が、個別指導します。

PD Cafe Online
パーキンソン病専門の運動動画配信サービス。月〜金で毎日運動や発声等に関する動画配信をしています。医療機関でしかなかなか会えない専門家に気軽に質問ができます。

執筆者

小川順也

理学療法士/LSVT BIG認定療法士

2011年〜2015年 国立精神・神経医療研究センター病院勤務

2017年〜株式会社Smile Space代表取締役就任

2022年は

パーキンソン病・運動障害疾患コングレスのPDナース・メディカルスタッフ研修会にてパーキンソン病のリハビリテーションというテーマで医療従事者へ向け講演を実施。その他多数の講演にてパーキンソン病のリハビリテーションを啓発している。

著書:パーキンソン病と診断されたら最初に読む運動の本(日東書院)

共著:パーキンソン病の医学的リハビリテーション、神経難病100の叡智

投稿:百年人生におけるパーキンソン病治療の展望 第四刊 「診断早期からの運動継続プログラムで根治療法が確立されるまで動ける体作り」

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